「相関関係は因果関係の前提に過ぎない」(cf.Wikipedia)
こんなサイトで統計学の専門的な話に言及しても誰も得をしないと思うので、
あくまで『因果推論』という漠然とした“ものの捉え方・考え方”についての話。
因果関係ばかりが物事の“関係”ではない
例えば、テキトーに自作したものなのですが、こんなグラフがあったとしましょう。
問.このグラフからはどんなことが分かりますか?
実はこれ「専業主婦率の低下が少子化の原因に…」と考えるのは論理飛躍になります。
というのも、このグラフからは「専業主婦率」と「特殊合計出生率」に強い関係がある
…ように見えます(専門用語で「相関関係」と言います)が、一口に関係と言っても、
1. 「専業主婦率」の低下が「合計特殊出生率」の低下の原因になっている
2. 「合計特殊出生率」の低下が「専業主婦率」の低下の原因になっている
3. 「専業主婦率」および「合計特殊出生率」の低下の原因となる第三の要素が別にある
4. 「専業主婦率」および「合計特殊出生率」の低下具合が “偶然” 似通っている
のいずれであるかまでは、グラフをパッと見ただけでは分からないからです。
この因果関係を正確に知るためには、両者以外の条件が全く同じ状態の世界を用意し、
例えば「専業主婦率」が低下しなかった、Ifの世界を再現・比較する必要があります。
が、当然ながらそんなことはタイムマシンでも存在しない限り不可能なのです。
もっとも、学者達はこうした因果推論の根本的な問題に黙って屈している訳ではなく、
様々な手法から推論が成されている訳ですが…面倒なのでそれはまた別の話。
さて、「あのとき、ああしていれば…」とか「あれのせいで…」なんて台詞は、
後悔や批判の常套句としてしばしば耳や口にする言葉ではありますが、前述の通り、
因果関係というのは安易に分かるものではありません。
その推論の、因果関係の論拠は、統計学的な検証に基づいたものでしょうか?
世界は様々な要素が複雑に絡み合った予測困難性があり(風が吹けば桶屋が儲かる)
何かを改善すると他が悪化するのもよくある話です(彼方を立てれば此方が立たず)
それらを安易に、自分に都合良く決めつけた挙げ句(石に漱ぎ流れに枕す)
“わかったつもり”になって後悔や批判に走ってはいないか、自戒が大切でしょう。
今ここからの光景は、こんな感じ。
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