「両方が納得する、また喜ぶようなことをするのは難しい」(故事ことわざ辞典より)
誰かにとっての正義は他の誰かにとっての悪であるように、彼方も此方も、
その両方を立てるのが困難なのは、何も人間関係に限った話ではないでしょう。
彼方を立てようとすると立たない“此方”を認識できているか
人間、局所的に分析や主張をするのは案外得意なものだと思います。
特に自分の肌で感じた、実体験の伴う課題や問題は理解が深まりやすく(知行合一)
割と容易にそれっぽい批判や、対案提示ができてしまうものでしょう。
しかし、眼前の問題に対する改善案をいざ実行しようと、彼方を立てようとすると、
別の所にしわ寄せがいってしまい、新たな問題が生じて此方が立たたないことも、
挙げ句の果てには、そうして生じた新たな問題の影響が巡り巡って、
眼前の問題に悪影響として返ってくることもあるものです(風が吹けば桶屋が儲かる)
そんな風に、一つ一つの問題は単純であっても、それらが複雑に絡み・関与し合い、
しかも常に流動的に変化しているからこそ、世界は難しいのであり(万物流転)
局所的な正しさが全域的な正しさであるとは限りません。
何かを改善するということは、別の何かを代償とすることであり(大事の前の小事)
基本的に長所と短所は表裏一体で、万能などそうないでしょう(毒薬変じて薬となる)
ですから、「なぜこんな簡単なことが改善されないの?」と疑問に思ことがあったら、
「関与している人間が無能だからだ!」とか「既得権益や私欲によるものだ!」などと
ありきたりな批判に走って思考停止してしまう前に、その単純に見える問題の裏側を、
自身の無知をまずは疑ってやる方が建設的で、大切かもしれません。
頭の中の世界は盲点や想定外が存在しない世界であり(言うは易く行うは難し)
まして人は論理よりも結論ありきで考えたがるものですから(石に漱ぎ流れに枕す)
人は案外矛盾を抱えやすく、実行に移さなければ、それに気付きにくいものでしょう。
ある問題では「万一の想定外があったらどうする!即時撤廃すべき!」と言いながら、
別の問題では「万一などと不要に危機感を煽るな!もっと現実的に!」と言うなど、
どちらの主張も一理あれど、両方同時に主張すると矛盾が生じかねないような、
ケースバイケースとはいえ、実際そんな主張を平然としている人は多いものですから、
自他の主張を、そんな観点から捉えてみるのも一興かもしれません。
今ここからの光景は、こんな感じ。
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どんなに正しい意見を寄せ集めても、ちぐはぐであっては良いものにはならない